家族が統合失調症と診断されたら

統合失調症の回復のために家族ができること

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陽性症状

統合失調症の急性期(発病初期)に見られる妄想、幻覚などの症状を「陽性症状」と呼びます。

現実と非現実の境界が顕著にぼやけ、思考の一貫性が低下して会話のまとまりがなくなるなどの症状を伴うこともあります。陽性反応の妄想、幻覚には2つの特徴があり、それを知ることで幻覚や妄想に苦しむ気持ちが理解しやすくなります。

統合失調症の陽性症状

●陽性症状の特徴(1)内容の特徴

統合失調症の妄想や幻覚の主体は「他人」です。その「他人」が本人に対して悪い働きをしてくるという、人間関係が主題になっています。そしてその内容は、患者本人が大切に思っていること、劣等感を持っていることなど、本人の関心事や価値観に関連していることが多いようです。

妄想や幻覚の主体が他人であっても、その内容が患者本人の気持ちや考えに由来するものだということが統合失調症の陽性症状の特徴だと考えて良いでしょう。

●陽性症状の特徴(2)気分に及ぼす影響

妄想や幻覚は統合失調症患者にとっては、現実のこととして認識されています。そのため不安感や恐怖が引き起こされて、それを放っておくことができなくなります。いやおうなく妄想、幻覚の世界に引きずり込まれてしまうのです。場合によっては妄想や幻覚によってもたらされた情報に従って、実際の行動に走ってしまう場合もあります。

大事なのはそれが現実でなくても、患者自身にとっては間違えようもなく現実だということです。家族から「それは本当の声ではない」「事実とは違う」と説明されても、かたくなに信じようとしないのもそのためです。

妄想

妄想は事実と異なる内容を信じ込んでしまい、家族が幾ら説明しても受け入れることができなくなります。妄想には次のようなものがあります。

  • 【迫害妄想】「街ですれ違う人に紛れている敵が自分を襲おうとしている」
  • 【関係妄想】「近所の人の咳払いは自分への警告だ」
  • 【注察妄想】「道路を歩くと皆がチラチラと自分を見る」
  • 【追跡妄想】「警察が自分を尾行している」

これらの妄想は自分が被害にあうことを想定しているため、総称して「被害妄想」と呼んでいます。また逆に「自分は世界を変える力がある」などのような「誇大妄想」が表われることもあります。他に妄想に近い症状として、は、次のようなものもあります。

  • 【考想化声】「考えていることが声となって聞こえてくる」
  • 【作為体験】「自分の意思に反して誰かに考えや体を操られてしまう」
  • 【思考伝播】「自分の考えが世界中に知れわたっている」

幻覚

幻覚には視覚だけではなく聴覚や嗅覚、味覚、触覚など人間の五感に働きかける様々な幻覚があります。統合失調症に多く見られるのは聴覚に働きかける幻聴で、誰もいないのに人の声が聞こえてきたりします。

代表的な幻聴は「お前はバカだ」などと本人を批判するような内容や「あっちに行け」と命令する内容、「今トイレに入りました」などと監視しているような内容などです。幻聴に聞き入ってニヤニヤしたり、幻聴と会話してぶつぶつ独り言を言ったりするため、家族からは気味悪がられて苦しさを理解されにくい場合も少なくありません。

耳元で絶えず誰かが自分の悪口を言っているような幻聴の場合には、物事に集中できなくなったり、眠ることさえ難しくなってしまう場合もあります。

陽性症状の問題点

妄想、幻覚といった統合失調症の陽性症状では、症状によってもたらされたものによる行動が本人にも家族にも大きな問題になります。

たとえば盗聴されているという妄想がある場合では、真夏に窓を閉め切ってガムテープを貼り巡らせてふさいでしまったり、電話線を切ってしまう、天井板を剥がしてしまうなどの行動が見られることがあります。家族から見れば明らかに異常な行動でも本人にとっては正常な反応なので、自分が病気だという自覚(病識)がありません。

一般の病気では症状が進行するほどに患者本人の病識が高まりますが、統合失調症では病状が深刻になればなるほど患者本人の病識が少なくなっていく問題があります。

家族が陽性症状に対応するには

妄想、幻覚のような統合失調症の初期に多く発現する陽性症状に家族が対応する最も適切な行動とは何かと聞かれたら、迷わず「なるべく早期に治療を始められるようにリードすること」と答えるでしょう。

統合失調症は発病から治療を受け始めるまでの期間を、いかに短くするかが治癒のポイントです。遅くなればなるほど後に症状が残ってしまう危険性が高まるため、早期治療が不可欠です。しかし本人が病気だという自覚を持っていない場合は、治療を始めることは口で言うほど簡単ではありません。いくら本人のためといっても無理やり病院に連れて行ったり、騙して診察を受けさせれば家族の信頼も失われてしまいます。

しかし妄想や幻覚で苦しんでいる上に家族まで信頼できなくなれば、病気にも悪い影響が出ることは明らかです。それでは、統合失調症の妄想や幻覚で苦しんでいる患者に対して、家族はどのように接すれば良いのでしょうか。

苦しさを理解すること

患者本人の苦しみを理解することは困難です。1日中耳元で「お前はバカだ」「お前はこそ泥だ」などと言われ続けていたり、誰かが自分に危害を加えようとして準備していると毎日不安におびえていたら神経がまいってしまいます。

その苦しみを理解することなど到底できないことでしょうが、患者本人が苦しんでいるという事実を肯定することならできるはずです。苦しさ、辛さを肯定して共感すること、苦しさを共有することが家族が統合失調症患者に対してできる唯一のことと言っても良いでしょう。

肯定する、共感すると言ってもただ「そうだ、そうだ」と言えということではなく、苦しみを一緒に背負うということ。全ては無理でも、ほんの少しだけでも苦しみを一緒に持つということが必要なのです。

もちろん家族も普通では考えられないほど辛い状況なのですが、本人の苦しさはそれ以上だということを理解することが、少なくとも家族の信頼関係を失わずにすむ最良の方法かも知れません。

 
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